日本で石油ファンヒーターや石油ストーブを製造している会社と言えば、株式会社コロナ、ダイニチ工業株式会社、株式会社トヨトミあたりが頭に浮かびます。
遠い昔、東芝、日立製作所、三洋電機、松下電器、三菱電機、シャープなどの大手電機メーカーが石油ファンヒーターを製造していました。しかし、それらは既に市場から撤退しています。
ほとんどの賃貸物件は石油ファンヒーターや石油ストーブの使用を禁止しています。分譲マンションも石油系の暖房器具を禁止している建物が多いのではないでしょうか。
石油ファンヒーターや石油ストーブのニーズは一戸建て住宅、倉庫、小規模工場、そして、エアコン暖房の使用が難しい空間となります。
そもそも、昭和の時代から平成にかけて建てられた一戸建て住宅の多くは、お世辞にも高気密高断熱とは言い難いものでした。
これが理由でエアコン暖房では部屋が十分に暖まらず、各家庭で石油系の暖房器具が使われてきたのです。
しかし、時代は変わりつつあります。
今や住宅業界では、高気密高断熱の住宅が増加傾向にあります。省エネ住宅が当たり前。よって、高気密高断熱住宅の暖房器具は電気エアコンがメイン。
そこで、当ブログは石油系の暖房器具とエアコン、そして、住宅事情の関係を深掘りしてみたいと思います。
更に、開放式の石油ファンヒーターと石油ストーブの将来を予測してみます。
開放式石油ファンヒーターと石油ストーブの将来
開放式、石油ファンヒーターと石油ストーブは歴史が長い暖房器具。もはや、これらは完成の域に達しています。
完成の域に達している石油ファンヒーター
当ブログの管理人は、よくホームセンターを利用する1人。秋口に入ると、ホームセンターの入口に各種暖房器具と加湿器が鎮座しています。
管理人は毎年のように、石油ファンヒーターのカタログが気になることもあり、手に取って持ち帰っています。某石油ファンヒーターメーカーのカタログは以下の内容でした。
電気代が安い
石油ファンヒーターはメーカーの燃焼方式によって、電気代が5~6倍もの開きがあります。エコタイプの石油ファンヒーターは弱燃焼時、LED電球1個分の消費電力とほぼ同じ。
最速7秒で点火
石油ファンヒーターの[運転]ボタンを押すと、通常は1分前後で点火がスタートします。より早い点火スピードを実現するために、余熱機能が内蔵されているモデルがあります。
灯油が長持ち
灯油を使う暖房器具はタンクへの給油に手間がかかるため、火力を絞ることができる石油ファンヒーターは給油頻度が少なくなります。
カンタン給油
タンクへの給油時、手の汚れを防止する機能が組み込まれています。
ニオイ低減機能
一部の機種に光触媒除菌・脱臭フィルター、消臭気流バー、ニオイ取り触媒、消臭シャッター、消臭消火制御、ニオイカットメカなどの消臭対策が施されています。
家庭用エアコンはモデルチェンジの度にカタログに省電力化や新機能が謳われています。
その点、石油ファンヒーターは完成の域に達していることもあり、目を引くような新機能の搭載は少ない印象を受けます。
また、昔ながらのAC100V電源不要の石油ストーブにも消臭機能が搭載され、製品の完成度に磨きをかけている印象を受けます。
メリット
・石油ファンヒーターの点火スイッチON後、約40~60秒で熱風が出る。
・部屋が暖まるスピードが早い。
・灯油を燃焼して水分が放出される。(加湿機能)
・石油ストーブはAC100V電源が不要で防災用に最適。
・石油ストーブの上にやかんを乗せて、湯沸かしと加湿ができる。
・本体価格が手頃(1~3万円台)
石油ファンヒーターの市場規模は年間200万台ほどの横ばいで推移していることからも、未だ根強い人気を集めています。
デメリット
・室内の空気汚染対策として、小まめな換気が必須。
・火を使う暖房器具の取り扱いに要注意。
・灯油の購入と給油の手間。
・子供がいる家庭では要注意。
・最低限のメンテナンスが必要。
・停電時、石油ファンヒーターは使用不可。
大手電機メーカーが石油ファンヒーターから撤退
冒頭のように、かつて各電機メーカーが石油ファンヒーターを製造していた過去があります。各大手電機メーカーが石油ファンヒーターから撤退した背景として、以下が考えられます。
・エアコン性能の向上
・一酸化炭素中毒による死亡事故
・開放式石油ファンヒーターの空気汚染
・火災発生のリスク
・給油の手間
・他の暖房器具のラインアップが充実
石油から電気エアコンへ
高気密高断熱の省エネ住宅が増加中の現在、省エネ住宅は夏はもちろん、冬もエアコンを使用します。冬季、家の断熱性能が高ければ、エアコン暖房で事足りるのです。
住環境が変化すれば、暖房器具のニーズも応じて変化していきます。
今日、日本のどこかで省エネ住宅が完成し、お施主様への引き渡し日を迎えているかもしれません。この流れが10年、20年後の暖房器具のニーズを徐々に変えていくのです。
2000年以前に建てられた多くの住宅には「単板ガラス+アルミサッシ」が設置されていました。しかし、今や旧世代の「単板ガラス+アルミサッシ」の在庫を探すのが大変なほど。
今や家の窓は最低限、ペアガラスの窓がデフォルト化し、住宅の断熱性能は時代と共に高まってきました。
よって冬季、高気密高断熱の住宅はエアコン暖房がデフォルト。
もちろん、石油ファンヒーターのメリットはあるものの、室内の空気を汚すため換気が必須。石油ファンヒーターに必ず「1時間に1~2回の換気」というステッカーが貼られていることからも、一酸化炭素中毒に注意する必要があります。
そして、石油系の暖房器具の火災リスクがゼロではない以上、開放型の石油系暖房器具のニーズは横ばいから減少へ転じる可能性が推測されます。
空調の未来予測
当ブログの管理人が予測する冬の空調の将来は、こちら。
・寒さが厳しい北海道や寒冷地では、今後もFF式石油ストーブが使われる。
(FF式:室外の空気を取り入れて、室外へ排気する方式。)
・石油ストーブは防災用や工場、倉庫などの半開放空間、お寺などの大空間の暖房器具として、一定のニーズが続く。
・石油ファンヒーターは高気密高断熱住宅の普及と共に、中長期的に衰退。
そして、関東から中部、近畿にかけての平野部で比較的、温暖な地域(6地域)では、エアコン暖房の比率が高まっていく可能性が高いと推測します。
空調の主役は電気エアコン
ヒートポンプ技術
エアコンに採用されているヒートポンプ技術は、入力エネルギー以上の熱エネルギーを得られる省エネ技術。
電気エアコンの最大の特徴は1台で「冷房」、「暖房」、「除湿」の3役をこなすところ。地球上で、1台で冷房、暖房、除湿の3役をこなす空調設備は電気エアコンのみ。
更に、空気清浄機能が内蔵されているエアコンも発売されています。
COP2以上
エアコンのCOP(※Coefficient of Performance)は「2」以上。COP2とは、エアコンに1のエネルギーを入力すると、2のエネルギーを出力します。
エアコンの性能によっては、COP3~5。
これは、エアコンに「1」のエネルギーを入力すると、「3~5」のエネルギーを出力するという意味。
例えるならば、壁に向かって「1」のスピードでボールを投げると、「3~5」のスピードでボールが跳ね返ってくるようなもの。
このような魔法とも言える省エネ空調システムはエアコン以外に存在しません。
※COP(Coefficient of Performance)
COPとは、定められた温度条件において、消費電力1kW当たりの冷房と暖房能力(kW)を表したもの。この数値が大きいエアコンほどエネルギー効率が高く、省エネ性能が高くなります。
数々のメリット
家庭用エアコンのメリットは他にも、
・壁掛けエアコンは全館空調システムのような高額な空調機器ではない。
・空気が汚れない。
・火災発生のリスクが無い。
・給油の手間が無い。
・IoTエアコンはスマホで操作OK
などが挙げられます。
では、なぜ1台のエアコンで冷房と暖房ができるのか、魔法とも言える技術をスラスラと説明できる人は業界の関係者以外ではまずいません。
そこで、エアコンの仕組みを知っていても損は無いと思います。
以下のYouTube動画で、エアコンの省エネ技術を改めて見直してしまうかもしれません。
エアコンの仕組み【1】
エアコンの仕組み【2】
エアコンの仕組み【3】
エアコンは毎年のように進化を続け、モデルによっては人感センサーが内蔵されています。
センサーが人を追いかけるように自動で風向きと風量をコントロールしたり、逆に人を避けるように風向きと風量をコントロールしてくれます。
部屋が無人になると、自動的にパワーセーブモードに入るエアコンも存在します。
また、IoTエアコンはスマートフォンで各種操作を可能とするため、ライフスタイルによっては利便性が高まります。
冬は要加湿器
冬季、エアコン暖房が稼働する以上、空気の乾燥を防ぐために加湿器が必須となります。
加湿器の種類は多く、意外と加湿器選びは難しいのです。機種によって、メリットとデメリットがあるため、好みに合う加湿器を慎重に選びたいもの。
詳細は関連記事をご参照ください。
【関連記事】
光熱費の内訳
2000年以前に建てられた一戸建て住宅の光熱費の内訳は「電気」「都市ガス or プロパンガス」「灯油」の3つ。
キッチンでガスコンロを使い、入浴時はガス給湯器が作動し、冬季はエアコン暖房や石油ファンヒーターを使用してきました。
その後、エコキュートとIHクッキングヒーターを設置する住宅が増加し、反比例するかたちでガスが使われなくなってきました。
高気密高断熱住宅の増加により、石油ファンヒーターからエアコン暖房へと暖房器具が変わりつつあります。
更に、新築時に太陽光パネルを設置する家が増加傾向にあります。今や、売電には期待できなくなったものの、家の電気消費を太陽光パネルで賄うことで、ZEH(ゼッチ)住宅に近づきます。
以下のように、一戸建て住宅の光熱費の内訳は変わりつつあります。
Before
・電気
・都市ガス or プロパンガス
・灯油
After
・電気
・都市ガス or プロパンガス
停電時、オール電化住宅の全機能が停止するリスクはあります。ただ、屋根に太陽光パネルを設置してあれば、日中、自律運転に切り替えることで、一部の電気製品の使用は可能。
時代の流れは、電気と化石燃料の混合から電気へと変わりつつあります。
まとめ
当ブログの管理人が予測する、冬の空調の将来のまとめ。
・北海道などの寒冷地では、今後もFF式石油ストーブが使われる。
・石油ファンヒーターの需要は年数をかけて減少していく可能性がある。
・石油ストーブには一定の需要が続く。
・冬季、エアコンで空調する家が増加中。
家の暑さ、寒さ対策
一口に高気密高断熱住宅であっても、実は、家によって気密性能と断熱性能には無視できない大きな性能差があります。
一条工務店やスウェーデンハウス、一部の設計事務所や工務店が設計する木造住宅は横綱クラスの高気密高断熱住宅。
他方、高気密高断熱住宅とは謳っているものの、多くの家の性能は横綱クラスには及ばないのが事実です。
誰もが気になるのは、夏の暑さと冬の寒さ。
高気密高断熱住宅であっても、想像していたより夏は暑く、冬は寒い家が存在します。
そこで、そのような住宅でも、夏は涼しく、冬は暖かく生活空間を整える方法があります。
[窓]+ガラスフィルムで快適空間
夏の暑さ対策
夏の暑さの約70%は建物の窓が原因。
そこで、太陽光の日射熱や西日の眩しさと暑さ対策として、窓ガラスにガラスフィルムを施工します。具体的には「遮熱フィルム」を施工することで、日射熱を大幅にカットできます。
詳細は関連記事をご参照ください。
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冬の寒さ対策
冬の寒さの約60%は建物の窓が原因。
一戸建て住宅は東西南北の外壁が全て外気に接しています。各壁に窓が設置されている以上、寒さ対策が重要です。
そこで、窓ガラスに断熱性能を持つガラスフィルムを施工することで、冬の寒さを和らげることができます。
詳細は関連記事をご参照ください。
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