冬季、床暖房の部屋はとても暖かく快適。
床暖房は床全体を暖めることで、その輻射熱で室内を暖める仕組み。床暖房はエアコン暖房や石油ファンヒーターのような温風による風の動きがありません。
床暖房により、じわじわと床全体が暖まり、部屋全体が暖かくなります。
床暖房を設置するには、それなりの初期投資が必要なものの、床暖房ならではのメリットがあります。
では、住宅の床暖房の種類とメリット、デメリットを比較しながら、床暖房の将来を考えてみます。
床暖房の生い立ち
2000年以前に建てられた住宅は断熱性能と気密性能が共に低く、「単板ガラス+アルミサッシ」の窓が普通に設置されていました。
遠い昔、日本の住宅は断熱性能と気密性能を高める概念が薄かったのです。
かつて、木造住宅の出来具合は大工さんの腕に左右され、気密性能が低い家が多かったのです。
昔の家は寒くて普通でした。
よって冬季、 石油ファンヒーターや石油ストーブにホットカーペット、こたつなどで暖を取り、厚着をして寒さをしのぐのが日本の普通のライフスタイルだったのです。
もちろん、日本人は好き好んで、寒い家で生活していた訳ではありません。
冬季、もっと暖かく過ごしたい・・というニーズが床暖房システムの誕生に繋がったのではないでしょうか?
昔は低気密で低断熱の家が多かったからこそ、床暖房のニーズがあったのです。公式を作るならば、
「低気密低断熱住宅 + 床暖房 = 冬、暖かい家」
1970年代から一般住宅に床暖房の採用が始まっていることからも、床暖房は約半世紀の歴史があります。
床暖房の種類
床暖房の種類は大きく電気式と温水式の2つ。
電気式
蓄熱式床暖房
蓄熱式床暖房は深夜電力などで蓄熱材を暖め、その輻射熱で室内を暖める方法。
PTCヒーター式床暖房
PTCヒーター式床暖房とは、フローリング下のPTCヒーターの一部の高温になると抵抗値が上昇し、その部分の発熱を抑制して無駄な電力消費を抑える仕組み。
例えば、南側の日当たりがいい部屋の床温度が上昇すると、その部分の発熱を抑えて電気代を節約する床暖房。
電熱線式床暖房
電熱線ヒーター式床暖房は、床下に電熱線のヒーターを設置して床面を暖める従来からある床暖房。
温水式
温水式電気床暖房
エコキュートを導入している家ならば、別途、ヒートポンプを設置することで導入可能。床下の温水パネルを敷き詰めて床を暖める仕組みの床暖房。
温水式ガス床暖房
湯水式ガス床暖房は、ガス給湯器で水を温めて、そのお湯を床下に設置してあるパイプ内を循環させることで部屋を暖める仕組みの床暖房。
ハイブリッド式床暖房
電気ヒーター式床暖房やヒートポンプ式温水床暖房、ガス式温水床暖房はスイッチONから部屋が暖まるまで1時間以上かかる難点があります。
この問題を解決するハイブリッド式床暖房は、最初はガスでお湯を作り、床下に設置してあるパイプ内を循環させて部屋を暖める仕組み。その後、電気で暖かさを保つハイブリッド式の床暖房。
床暖房のメリット、デメリット
メリット
・足元からポカポカと暖かい。
・部屋全体が暖かい。
・子供やペットにも安全、安心。
・空気が対流しない。
デメリット
・電熱線式床暖房を除き、初期費用が高額。
・暖かさを感じるまで時間がかかる。
・メンテナンスが必要。
→ 温水式の場合、定期的な不凍液の補充と交換が必要。
・概ねランニングコストが高い。
・床暖房の故障の問題。
→ 床暖房は住宅設備である以上、中長期的にはトラブルが発生するリスクがあります。
スマイラボのアンケート
スマイラボのアンケートによりますと、家に床暖房を設置している方の中で
【築11~20年】床暖房を使用中の方は67.1%
【築21~30年】床暖房を使用中の方は32.1%
床暖房のランニングコストや故障による放置などで、床暖房の使用率が下がる傾向があるようです。
(出典)スマイラボ
床暖房を採用しない工務店
床暖房システムに対する考え方は、ビルダーによって温度差があるようです。オプションで床暖房を用意しているビルダーもあれば、床暖房を採用していない工務店もあります。
中には、床暖房のイニシャルコストとランニングコスト、メンテナンスコストの問題から、床暖房に否定的な考えを持つ工務店も存在します。
そのような工務店はスーパー工務店と呼ばれるビルダーに見られ、家の気密性能と断熱性能が高いため、床暖房の必要性が無いのです。
床暖房の将来
現在、住宅業界は「高気密高断熱」を合言葉に、家の性能を高めるトレンドの渦中にあります。そして、既に高気密高断熱住宅の終着点が見えています。
一部のビルダーは終着点に相当する省エネ住宅を建てている以上、他のビルダーも年数をかけて、それに追従する流れが推測されます。
これを自動車業界に例えますと、21世紀は燃費の時代。京都議定書が発したCO2削減が国際的な目標である以上、各自動車メーカーにとって燃費は重要課題の1つ。
各国の燃費規制は厳しさを増してきました。
ハイブリッドカーが街乗りから高速道路まで好燃費を叩き出す以上、他の自動車メーカーも商品力を高めるべく、燃費技術の向上に邁進しています。
ビルダー業界も似たようなところがあり、各ビルダーは省エネ住宅のトレンドの中で、同じベクトルを持っています。
このようなトレンドが進行中である以上、家の性能が益々、底上げされていくでしょう。本当の意味での高気密高断熱住宅が更に増えていくと考えるのが順当です。
今までの住宅設備は幾多の変遷を辿り、進化してきました。その中で、時代に合わない設備やメリットを見いだせない設備は、淘汰される運命を辿ってきました。
住宅業界のトレンド変化はアパレルのような業界と比較して、牛歩の歩みのようにゆっくり。
ファッション業界は流行り廃りのトレンド変化が早い代表的な存在。ファストファッションは2週間程度の短期間なトレンドが変化していく世界。昨年のトレンドは昔のトレンドなのです。
対する住宅業界はデザインのみならず、気密性、断熱性、耐震性などの本質的な機能性が重要視されます。これらの機能性を高めるトレンドは短期的な流行りではなく、中長期的に続いていきます。
まとめ
以上のトレンドからすると、家の気密性と断熱性が十分に高く、冬季、エアコン暖房で室内が十分暖かいのであれば、あえて床暖房をプラスするニーズは減少すると考えられます。
家があたかも魔法瓶のような断熱性能と気密性能を持っていれば、わざわざ初期投資が高く、ランニングコストも高い床暖房を設置する意味が薄らぐのです。
また、将来的な床暖房のトラブルを視野に入れておく必要があり、前述のスマイラボのデータの真意が見えてきます。
このような背景から、東北から北海道エリアを除き、当ブログの管理人は床暖房のニーズは中長期的にシュリンクしていく可能性が濃厚だと思うのです。
家の弱点は今も昔も、将来も”窓”
窓の断熱性能は熱貫流率(U値)で表し、単位はW/m2・K。このU値が小さいほど、断熱性能が高いことを意味します。
一戸建て住宅の外気に接触している外皮は天井、壁、床、窓。各部材によって熱貫流率が異なります。
一例として、以下のような家があるとします。
Aハウスの各部材の熱貫流率(U値)
単位はW/m2・K。
【天井】0.30
【壁】0.60
【床】0.50
【窓】1.31(YKK AP、APW330)
・天井と壁、床は断熱材の種類と厚みで熱貫流率が変わってきます。
・2020年現在、YKK APのAPW330は高性能な窓として幅広く知られています。
各U値が小さいほど断熱性能が高く、Aハウスは特に天井の断熱性能を高めていることが分かります。
逆に、熱貫流率の値が最も高い(断熱性能が低い)のは「窓」。
YKK APのAPW330は高性能な窓として知られているものの、それでも窓は天井や壁、床に比べて桁違いに熱を通しやすいことが分かります。
このことからも、高気密高断熱住宅であっても「窓」は家の弱点と言えます。
窓から熱が逃げやすい以上、熱が逃げにくくする方法として窓に「遮熱断熱フィルム」を貼る方法があります。
遮熱断熱フィルムで夏は涼しく、冬は暖かく
窓ガラスに遮熱断熱フィルムを施工することで、太陽光の日射熱をカットし、室内の熱が外へ逃げにくくなります。
これにより、家の中は夏はより涼しく、冬はより暖かくなります。よって、エアコンや暖房器具の効率がアップし、光熱費の削減に繋がります。
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