「Low-Eガラス」(ローイーガラス)という言葉は、一般的にはなじみが無い言葉。この言葉は、主に住宅などの建築業界で使われている言葉です。
建築物に設置されている窓ガラスの中で、Low-E複層ガラスとも呼ばれるLow-Eガラスはペアガラスなどの複層ガラスに更なる機能性が与えられているガラス。
このLow-Eガラスはどの程度、太陽光の紫外線/UVをカットできるのでしょうか?具体的なUVカット率は?
Low-Eガラスはガラスの第2面や第3面に銀や酸化亜鉛などの特殊金属膜がコーティングされているため、紫外線カットも期待できそうです。
そこで、当ブログの管理人がサッシメーカーの代表的な3社であるYKK AP®、LIXIL/リクシル、EXCEL SHANON/エクセルシャノンさんのオフィシャルサイトにアクセスし、Low-E複層ガラスの紫外線カット率をリサーチしてみました。
Low-E複層ガラスの紫外線カット率
YKK AP®、LIXIL/リクシル、EXCEL SHANON/エクセルシャノンの各サッシメーカーは膨大なラインアップを抱えているため、条件を統一しての比較が難しくなります。
そこで、熱貫流率(U値)が「1.1~1.4W/m2・K」の遮熱と断熱タイプのLow-E複層ガラスを各メーカーのラインアップからピックアップしてみました。
YKK AP®

APW330 Low-E複層ガラス(遮熱タイプ)
YKK APのオフィシャルサイトによりますと、Low-E複層ガラスの遮熱タイプと断熱タイプでは紫外線カット率が異なります。
APW330 | 紫外線カット率 (%) |
Low-E複層ガラス (遮熱タイプ) | 76.3 |
※熱貫流率(U値)1.4W/m2・K
APW330 Low-E複層ガラス(断熱タイプ)
APW330 | 紫外線カット率 (%) |
Low-E複層ガラス (断熱タイプ) | 67.7 |
※熱貫流率(U値)1.4W/m2・K
(出典)YKK AP® Web catalog(APW330商品カタログ)
LIXIL/リクシル

リクシルのサーモスX、エルスターS、サーモス2-H、サーモスL、デュオPG、LW、リプラス専用枠、インプラスにLow-E複層ガラスが用意されています。
Low-E複層ガラス、グリーン高遮熱仕様(遮熱タイプ)
– | 紫外線カット率 (%) |
Low-E複層ガラス (遮熱タイプ) | 80 |
※熱貫流率(U値)(アルゴンガス入り)1.1W/m2・K
Low-E複層ガラス、クリア(断熱タイプ)
– | 紫外線カット率 (%) |
Low-E複層ガラス (断熱タイプ) | 69 |
※熱貫流率(U値)(アルゴンガス入り)1.2W/m2・K
EXCEL SHANON/エクセルシャノン

シャノンウインド2s Low-E複層ガラス・ブロンズタイプ(遮熱タイプ)
シャノンウインド2s | 紫外線カット率 (%) |
Low-E複層ガラス (遮熱タイプ) | 66.7 |
※熱貫流率(U値)1.4W/m2・K(アルゴンガス入り引き違い窓)
シャノンウインド2s Low-E複層ガラス・ブロンズタイプ(断熱タイプ)
シャノンウインド2s | 紫外線カット率 (%) |
Low-E複層ガラス (断熱タイプ) | 66.7 |
※熱貫流率(U値)1.4W/m2・K(アルゴンガス入り引き違い窓)
(出典)EXCEL SHANON/エクセルシャノン(シャノンウインド2s)
Low-E複層ガラスの紫外線カット率は約60~80%
以上のリサーチ結果は条件が同一ではないため、あくまで参考程度のデータです。
サッシメーカー毎にサッシと窓ガラスに対する思想と設計コンセプトが異なり、それらが製品づくりに反映されています。よって、各サッシメーカーが製造している製品は、それぞれ特徴と個性があります。
今回、ピックアップした各3社のLow-E複層ガラスの紫外線カット率は「60%台後半から80%」。モデルによっては、更に紫外線カット率が高いタイプもあります。
概ね、Low-E複層ガラスの傾向として、一般的に使われているLow-Eガラスは一定レベルの紫外線カット率が与えられています。しかし、99%以上といった高いカット率ではありません。
としますと、建物に高性能なLow-E複層ガラスが設置されていても、毎日、紫外線が室内に流入しています。室内にいる人と物は紫外線を浴びていることになります。
ここで、室内に流入する紫外線をどのように捉えるのか、更に深掘りしてみます。
紫外線が室内に流入すると

太陽光に含まれる紫外線は波長により、紫外線A波(UVA)、紫外線B波(UVB)、紫外線C波(UVC)に分けることができます。これらの中で、UVCはオゾン層で吸収されるため、地表に届く紫外線はUVAとUVBの2種類になります。
この紫外線は道路や建物で乱反射を繰り返しています。あまり知られていない事実として、人が日陰の室内にいても、紫外線を浴びています。紫外線が室内に流入すると、大きく「人」と「物」に悪影響を及ぼします。
人への影響

肌の日焼け
人がUVBを浴びると個人差はあるものの、皮膚が赤くなって日焼けします。いわゆるサンバーンと呼ばれるもの。
肌のトラブル
人がUVAを浴び続けると、皮膚のシミやシワ、たるみの原因になります。
皮膚科医が執筆している複数の書籍によりますと、「紫外線は百害あって一利なし」という見解で一致しています。更に書籍によりますと、人が紫外線を浴び続けると、皮膚がんの原因になると警鐘を鳴らしています。
皮膚科の専門医によっては、室内にいても日焼け止めクリームの使用を推奨しているほどです。
物への影響

紫外線が窓ガラスから室内に流入し続けると、あらゆる物が影響を受けます。
室内のフローリング(無垢材と合板両方)やカーペット、畳、壁紙、カーテン、家具、調度品、絵画などが紫外線を浴び続けると、日焼けによる色褪せ、退色、劣化が進んでいきます。
中でも、せっかくコストをかけて床を無垢フローリングにしたものの、紫外線を浴び続けると板が日焼けして変色していきます。また、選びに選び抜いたお気に入りの家具が日焼けして変色していきます。
曇りや雨天時は紫外線量が減少するものの、毎日、日の出と日没を繰り返す以上、人も物も紫外線から逃れることはできません。
そこで、紫外線対策の中で最も効果が高く、持続性が高い方法として、窓ガラスにUVカットフィルムを貼る方法があります。
UVカットフィルムで紫外線対策

プロの業者が使用するガラスフィルムは99%以上、紫外線をカットできます。
Low-E複層ガラスにUVカットフィルムを貼る場合、Low-Eガラスのタイプや設置環境、ガラスフィルムの種類と相性の問題があります。
一般の方が安易な発想でLow-Eガラスに○△シートや遮熱シートなどを貼り付けると、ガラスが熱割れするリスクがあります。
その点、プロは熱割れ計算を行い、Low-Eガラスにマッチするガラスフィルムの提案が可能です。
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