2020年初頭から新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、今までのコロナウイルス感染防止対策として、以下が推奨されてきました。
・マスク着用
・三密回避
・こまめな手洗い
・こまめな換気
+
・(空気清浄機の使用)
(上記、空気清浄機の使用に()を加えたのは、空気清浄機と新型コロナウイルス除去の関係について、確かなエビデンスが公開されていないのが理由です。)
夏季、家庭や職場ではエアコン冷房を使用し、冬季はエアコン暖房や各種暖房器具を使用する以上、夏と冬の換気が容易ではありません。こまめに換気していたら、夏と冬の空調効率が低下します。
このような最中、ダイニチ工業株式会社のプレスリリースが興味深く、暖房器具と浮遊ウイルスの関係に一石を投じています。内容として、同社は石油ファンヒーター(開放型)の浮遊ウイルス除去効果の試験結果を発表しています。
石油ファンヒーターはコロナウイルスの除去に期待できるのでしょうか?
そして、引き続きこまめな換気が推奨されている以上、より暖房器具の効率を高めて光熱費を抑える対策をご紹介します。
ウイルス除去性能試験
2020年12月2日、ダイニチ工業株式会社が石油ファンヒーターによる浮遊ウイルスの除去性能評価試験結果をリリースしました。
試験内容
・試験空間の体積:25m3
・試験空間内で石油ファンヒーターを運転(未改造品)
・ウイルス噴霧器で試験ウイルスを浮遊させる
・試験開始時、10分、20分、30分後の浮遊ウイルス捕集
・試験機関:(一財)北里環境科学センター
・試験協力:暮らしの科学研究所株式会社
試験結果
試験経過時間 | 0分 | 10分 | 20分 | 30分 |
ウイルス減少率 | – | 79% | 96% | 99% |
出典元のダイニチ工業株式会社のオフィシャルサイトから「ダイニチ工業、石油ファンヒーターによる浮遊ウイルス除去効果の確認」データをPDFでダウンロードできます。
(出典)ダイニチ工業株式会社
試験結果を考察
試験結果から、25m3の空間で開放型の石油ファンヒーターを30分間運転すると、空気中に浮遊するウイルスを99%除去できたという内容です。
※この試験は新型コロナウイルス(正式名称:COVID-19、ウイルス名:SARS-CoV-2)の除去試験結果ではありません。
※25m3は約6.5畳の部屋の空間です。(1.62m2(1畳)×6.5畳×2.4m(天井高)≒25m3)
※これは、25m3という空間の試験であり、8畳や10畳の部屋ではウイルスが減少するまで更に時間が必要だと考えられます。
※高地と東北から北海道などの寒冷地で使われているFF式(密閉型、強制吸排気方式)ファンヒーターは外気を取り入れて灯油を燃焼し、排気する構造上、室内の浮遊ウイルス除去は不可と考えられます。
なぜ浮遊ウイルスを除去できる?
開放型の石油ファンヒーターの構造は石油ストーブより少々、複雑。本体背面のファンが室内の空気を吸い込み、バーナー部で気化させた灯油を燃焼させて熱風を排出します。
石油ファンヒーターの仕組み
【1】本体背面のファンが吸気
▼
【2】バーナー部で灯油を気化させて燃焼
▼
【3】高熱を帯びた空気が本体から排気
※石油ファンヒーターのメーカーにより、燃焼方式が異なります。
石油ファンヒーターの温風温度は120~130℃。エアコン暖房の温風温度と比較したら、この温度は熱風と言えます。
これは、当ブログ管理人の個人的な推測ながら、上記【2】のステップで浮遊ウイルスを含んでいる空気がバーナー部で高熱を帯び、ウイルスが瞬時に死滅すると考えることができます。
石油ファンヒーターは内蔵ファンで強制的に室内の空気を循環させて温風を出す構造上、旧来の石油ストーブより浮遊ウイルスの除去効果が高いかもしれません。
ウイルス除去が期待できる暖房器具、不明な暖房器具
ウイルス除去効果が期待できる暖房器具
・石油ファンヒーター
・ガスファンヒーター
上記2機種は使用する燃料の違いはあれど、化石燃料を燃焼させてファンで強制的に空気を循環させる構造です。これらは、室内の空気を強制的に循環させるため、ウイルス除去効果が期待できます。
ウイルス除去効果が少しは期待できる暖房器具
・石油ストーブ
・ガスストーブ
上記2機種にファンは未内蔵で化石燃料を燃焼させる暖房器具。ストーブ周囲に浮遊しているウイルスを除去する効果はあるかもしれません。
ウイルス除去効果が不明な暖房器具
・エアコン暖房
エアコン暖房の吹き出し温度は40~50℃。ヒートポンプ技術で熱を作り出すエアコンは、化石燃料を燃やす暖房器具の温風温度より低くなります。よって、エアコン暖房のウイルス除去効果は不明です。
石油ファンヒーターは新型コロナウイルスを除去可能?
恐らくダイニチ工業株式会社は法的な諸般の事情により、開放型の石油ファンヒーターと新型コロナウイルス除去の関係を明言していないのでしょう。
ダイニチ工業のみならず、他の暖房器具メーカーも同様に、暖房器具と新型コロナウイルス除去の関係を明言できないと思います。
新型コロナウイルスは変異を繰り返している未知のウイルスであり、まだ詳しく解明されていません。そのような背景があり、誰もが暖房器具と新型コロナウイルスの除去効果の関係を明言できません。
ダイニチ工業株式会社がプレスリリースで発表したデータをどのように解釈するかは、各人次第ではないでしょうか?
コロナの除去可能と解釈する派
新型コロナウイルスは紛れもない「ウイルス」である以上、他のウイルスと同様に石油ファンヒーターで除去可能と解釈する人もいるでしょう。
コロナの除去不可と解釈する派
反対に、新型コロナウイルスは「未知のウイルス」である以上、石油ファンヒーターで新型コロナウイルスを除去可能と考えるのは楽観的すぎると解釈する人もいるでしょう。
2021年の時点で、誰もが石油ファンヒーターの新型コロナウイルス除去効果について明言できません。しかし、石油ファンヒーターが新型コロナウイルスを除去できる可能性はゼロとは言えないかもしれません。
冬季、換気に気を付けながら、あくまで自己責任で石油系暖房器具を使用したいものです。
まとめ
コロナ禍の時代、夏と冬の効果的な換気が家庭や職場で大切な感染防止対策の1つ。
ダイニチ工業株式会社のプレスリリース内容は、浮遊ウイルス除去の試験結果であり、新型コロナウイルスの除去試験ではありません。
しかし、まだまだ日本で愛用者の多い石油ファンヒーターとウイルスの関係に一石を投じる試験内容です。
周知のように、石油ファンヒーターは火災リスクと空気汚染の問題があります。その反面、石油ファンヒーターは速暖性が高く、気密性と断熱性が低い建物でも、熱風で一気に部屋を暖めることができます。
対する、進化を遂げてきたエアコンはCOPが良く、節電効果が高いのが特徴。寒冷地を除き、もはや旧来の石油ファンヒーターや石油ストーブは暖房器具の主役ではありません。
しかしながら、コロナ禍の時代、今回のプレスリリースの内容から、旧来の石油系暖房器具が見直されるかもしれません。
冬の寒さの約60%は窓が原因
冬季の暖房器具は多種多様です。エアコン暖房を筆頭に、先の石油ファンヒーターや石油ストーブ、ガスストーブ、電気ストーブ、セラミックヒーター、オイルヒーター、こたつ等、数え上げたらきりがありません。
賃貸を含む集合住宅から一戸建て住宅、店舗、商業ビルまで、建物の最大の弱点は「窓」です。
建物の壁、屋根、床の中で、設置されている「窓」の断熱性能が1番低く、冬季、部屋が寒くなる大きな原因です。冬の寒さの「約60%」は窓が原因と言われます。
特に窓の性能が低いと、暖房器具の稼働中、外の冷気が窓とサッシを冷やし、室温を下げる方向に作用します。同時に、室内の暖まった熱(遠赤外線)が窓から外へ流出しています。
暖房効率を高める方法
暖房器具の暖房効率を高めて冬を暖かく過ごすためには、窓の断熱性能を高めるのが一番、効果的です。コスパが高い窓の断熱対策として、窓ガラスにガラスフィルムを貼る方法が効果的です。
具体的には、窓ガラスに「遮熱断熱フィルム」を施工します。
遮熱断熱フィルムは「夏」の眩しく暑い日射熱をカットし、「冬」の寒さを和らげてくれます。同時に、紫外線を99%以上カットし、台風上陸時の飛来物が窓を直撃した場合、ガラス飛散防止効果があります。
一石二鳥ならぬ一石四鳥のメリットをもたらしてくれるのが「遮熱断熱フィルム」。
詳細は関連記事をご参照ください。
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