日本国内の住宅地でログハウスを見かけることは少ないものの、長野県の避暑地などでログハウスを見かけることがあります。
ログハウスの定番デザインは、木が剥き出しの外壁に切妻屋根。ログハウスの佇まいからすると、ログハウスは都市部より、大自然の中で映えるデザイン。
山間部の道路を運転中、ひときわ目立つログハウスの飲食店が視界に入ってきたら、思わず減速して立ち寄りたくなるような雰囲気を醸し出しています。
そんなログハウスの特徴とDIY派のログハウスキット、ログハウスメーカー、ログハウスのメリット&デメリット、ログハウスの窓際の暑さと寒さ対策について解説します。
ログハウスの特徴
ログハウスは建築基準法で「丸太組工法(まるたぐみこうほう)」と呼ばれる工法。ログハウスの「ログ」は丸太を意味します。
ログハウスはログを横に設置して、上方に積み上げる工法。ログが交差する建物の角の部分は、ノッチと呼ばれる手法でがっちりと組み合わせます。
遠い昔、職人さんが丸太をカットして積み上げる「ハンドカット・ログハウス」が建てられていたそうです。一般的にログハウスと言えば、ハンドカット・ログハウスをイメージするかもしれません。
そして現在、予めコンピュータ制御の機械で丸太を精密に加工し、サネ加工された木を現場で積み上げる「マシンカット・ログハウス」が主流。
マシンカット・ログハウスの丸太は室内側が平らに加工されているため、室内側に凹凸が無く、スッキリとした空間を有効活用できるメリットがあります。
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ノッチの種類
ラウンドノッチ、サドルノッチ、フォーポイントサドルノッチ、ウェッジノッチ、スクエアノッチ、ロックノッチがあります。
サネ加工
ログの上下には、サネ加工が施されます。ログの上部に凸加工、下部に凹加工を施すことで、上下のログがしっかりと噛み合います。同時に、外部から雨水の侵入を防ぐ効果もあります。
ログハウスに使われる木
ログハウスに使われている木は国産スギ、ベイスギ、ベイマツ、トウヒなどの針葉樹が使われています。
ログハウスキット
検索すると、ログハウスキットを販売する業者が複数ヒットします。ログハウスキットとは、家版のプラモデルキットのようなもの。
DIY好きな方がログハウスキットを購入し、セルフビルドは不可能ではありません。このセルフビルドとは、DIYで家や小屋を建てるという意味。
ログハウスキットは1/1スケールのリアルな家を建てるキット。ログは複数台のトラックで建設地まで運ばれてきます。
なお、基礎工事から完成まで、1人でログハウスの建設は不可能です。複数の人工と建設過程で専門業者に施工の依頼が必要になります。
セルフビルドの流れ
このYouTube動画でログハウスのセルフビルドがイメージできます。整地と基礎工事から完成まで5分7秒で分かります。
基礎工事
ログハウスを建てる最初の1歩は基礎工事から始まります。ログハウスキットメーカーが基礎図面を出してくれるため、自分が設計する必要はありません。
しかし、基礎工事は素人では難易度が高く、専門業者に依頼することになります。業者を紹介してくれるキットメーカーもあります。
土台敷き
基礎工事が完了したら、次に土台敷きからスタートします。基礎の上に防虫と防腐処理が施されている土台材を敷いていきます。そして、断熱材を敷き詰めていきます。
ログ組み
このステップから本格的なログハウスの組み上げがスタートします。ログ材には判別するための英数字が与えられています。図面どおりにログを組み上げていきます。
桁ログ組み
1Fのログ組みが完成したら、その上に桁ログを乗せていきます。
妻壁の設置
ログを図面どおりに積み上げることで2Fの壁が完成します。
上棟
業者に依頼したクレーン車で棟木を上げて設置します。
屋根垂木の取り付け
屋根材を支える垂木を取り付けます。
野地板の取り付け
屋根材の下地材である野地板を取り付けます。
ドアと窓の取り付け
ドアと窓を取り付けます。
室内天井板の取り付け
屋根に断熱材をセットして室内から天井板を取り付けます。
床材の貼り付け
無垢の床材を床に貼り付けます。
電気工事
電気工事は専門業者に依頼します。
水回り工事
ユニットバスやキッチン、洗面所、トイレを搬入して設置工事を進めます。ユニットバス工事と上下水道工事、ガス工事は専門業者に依頼します。
間仕切り工事
室内に柱を立てて間仕切り壁を取り付けます。
外壁塗装
専門業者に足場を組んでもらい、外壁に防腐塗料を塗ります。
完成
以上がログハウスキットのセルフビルドの大まかな流れです。これでログハウスが完成。
ログハウスキットのメリット,デメリット
メリット
・建設コストが約1/2
・愛着のあるオリジナルなログハウスが完成する
デメリット
・自分が現場監督として、家づくりから専門業者の手配まで管理監督が求められる
・建築に労力と月数がかかる
以上のように、ログハウスキットを購入してセルフビルドはイージーではありません。
基礎工事、上棟、ユニットバス工事、電気工事、上下水道工事、ガス工事、足場工事はプロに依頼し、それ以外は人工を集めて、自分たちでログハウスを建築する必要があります。
セルフビルドは誰でもできるわけではないものの、家づくりのプロセスを楽しみながら夢が広がります。
日本のログハウスメーカー
ログハウスメーカーは、北は北海道から南は九州、沖縄まで存在しています。
ログハウスメーカーは地場工務店のような地域密着型の会社からBESSのように全国展開している会社まで様々。割合としては、一般的な工務店のように少数精鋭の10名以下のビルダーが数多く存在しています。
ログハウスのメリット&デメリット
ログハウスは丸太組工法と呼ばれる、他の建築工法とは大きく異なる工法で建てられます。
メリット
・機能美あふれるデザイン
ログハウスは他の建築物には見られない機能美が宿っています。大自然に溶け込むデザインから温かみを感じます。
・自然素材に囲まれたリラックス空間
ログハウスは壁も天井も木で囲まれているため、自然素材ならではの温もりを感じる空間。また、木の香りが漂う室内空間は精神的な安らぎとリラックス効果があります。
・調湿効果がある
木は湿度を吸収し、湿度が下がると放出する性質があります。
・シックハウス症候群が発症しにくい
ログハウスは在来工法や2×4工法に比べて合板の使用が少なく、クロスを貼る必要が無いためシックハウス症候群が発症しにくいと言われています。
・遮音性能が高い
建築物の遮音、防音性能は外壁の重量に左右されます。重い外壁ほど遮音、防音性能が高くなります。ちなみに、RC造の建物も防音性能が高くなります。
・耐震性
ログハウスメーカーの中には耐震等級3の設計を可能にしています。
・耐火性が高い
もし、隣家の火災発生によりログハウスの外壁に火が燃え移ると、ログの表面に炭素の層ができるため全焼しにくい特徴があります。
・耐久性が高い
定期的なログハウスのメンテナンスをすれば、その耐久性は100年以上と言われます。
デメリット
・漏水のリスクがある
ログハウスは丸太組工法である以上、壁に透湿防水シートを施工できません。
ログの上下にサネ加工が施されているものの、ログとログの間の隙間やログが交差するノッチから雨水が室内に入り込む漏水リスクがあります。
ログハウスの漏水対策として、軒(のき)の出を深くするデザインが多く見られます。私たちは漠然と、ログハウスは軒の出が深いイメージがあります。これは、横殴りの雨が降っても、雨が外壁に当たりにくくするための設計。
メンテナンスとして、コーキングやシーリング材でログとログの隙間を埋めていく方法があります。
なお、コーキングやシーリング材の耐久性は短く、ログが将来、どのように変形するのか予測できないため、定期的なメンテナンスが必要とされます。
・定期的なセトリング対策が必要
セトリング(Settling)とは、沈むという意味。木は乾燥すると、痩せて変形する性質があります。これが原因となり、ログハウスのログ壁が徐々に下がっていきます。
特に、築後2~3年間はセトリング現象が発生しやすいようです。
よって、柱とサッシ、ドア、階段はセトリングを前提に設計され、メンテナンスが必要となります。これは、他の建築物では発生しないメンテナンスです。
・断熱性能
ログハウスは断熱性能が高いイメージがあるかもしれません。
ログハウスで使われる針葉樹(杉、松)の熱伝導率は「0.12W/m・K」。グラスウールは「0.045W/m・K」。
素材の種類 | 熱伝導率 (W/mk) |
高性能グラスウール16K | 0.038 |
杉、ヒノキ | 0.12 |
合板 | 0.13 |
コンクリート | 1.63 |
鉄 | 48.0 |
アルミニウム | 237.0 |
ログハウスに断熱材を施工しないため、ログハウスは高断熱住宅と表現していいのかは微妙なところ。ただ、ログハウスは断熱性能が低いわけではありません。
木はセルロースと呼ばれる骨格で構成されていて、多くの空気を蓄えています。それらが断熱性能を発揮します。
・気密性能が低め
木は乾燥すると、痩せて変形する性質があります。外壁のログが変形して沈下していくため、気密性能を保ちにくくなります。
・定期的な外壁塗装が必要
ログハウスは木が剥き出しの建築物のため、一般住宅以上にこまめな外壁塗装のメンテナンスが必要です。
・腐朽菌のリスク
日本は腐朽菌が多く、ログは腐朽菌の被害を受けるリスクがあります。
・坪単価が高い
ログハウスの坪単価は一般的な地場工務店で建てる在来工法の木造住宅より高くなります。
まとめ
日本国内において、ログハウスで生活している方は少数派。写真やテレビでログハウスを見ることはあっても、あまり馴染みがない方が大多数です。
ログハウスはセトリング対策と呼ばれる、他の在来工法や2×4工法の木造、鉄骨造、RC造では不要なメンテナンスが必要とされる建築物です。
その他、小まめな外壁塗装や隙間対策など、他の住宅よりメンテナンスが必要です。
その反面、ログハウスは特殊で個性的な家ながら、新建材をほとんど使わない自然素材ならではの外観と内観、木の温もりが大きな特徴です。
ログハウスは一般的なクロス貼りの住宅では味わえない室内空間が広がり、天然木に囲まれた空間で大自然との一体感を抱きます。
アウトドア派でDIYをいとわない方にとって、ログハウスは気になる家の1つかもしれません。
ログハウスの遮熱、断熱対策
比較的、断熱性能がしっかりしているログハウスながら、建築物である以上、最大の弱点は「窓」。木造、鉄骨造、RC造を問わず、この世の建築物の中で断熱性能が一番低い場所は「窓」なのです。
夏季
夏季、眩しく暑い太陽光(遠赤外線)が窓から室内に入り込み、室温を上昇させます。同時に、高い外気温が窓とサッシを温め、室温を上昇させます。
冬季
冬季、冷え切った外気が窓とサッシを冷やし、室温を下げます。同時に、暖められた室内の熱(遠赤外線)が窓から外へ流出しています。
高性能な「ペアガラス+樹脂サッシ」であっても、ログハウスの屋根、壁、床の中で一番、断熱性能が低い場所はやはり「窓」なのです。
そこで、窓をカスタマイズすることで、窓の遮熱と断熱性能を高めることができます。これにより、夏と冬の暑さと寒さが和らぎ、エアコン効率がアップするため節電効果も得られます。
具体的には窓ガラスにガラスフィルムを施工します。
窓ガラスフィルムで夏はより涼しく、冬はより暖かい
多種多様な窓ガラスフィルムの中で、窓に「遮熱フィルム」、または「遮熱断熱フィルム」を施工します。
夏
遮熱フィルムが夏の眩しく暑い日射熱を最大「約70%カット」できます。これにより、室内の眩しさと暑さが和らぎ、エアコン効率がアップします。よって、節電にも繋がります。
詳細は関連記事をご参照ください。
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冬
遮熱断熱フィルムにより窓の断熱性能が「約30%アップ」します。遮熱断熱フィルムは暖房器具で暖められた室内の熱(遠赤外線)を閉じ込める効果があり、暖房効率が高まります。
よって、光熱費の削減にも繋がります。
詳細は関連記事をご参照ください。
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